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カツラの葉っぱ 大好き!

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小村雪岱の版画がええでぇ

<小村雪岱の版画がええでぇ>
図書館で『版画芸術 #146』という雑誌を借りたが、特集している小村雪岱の版画がええでぇ♪

この雑誌の解説にあわせて、その版画の一部を紹介します。
「日本橋」の装丁なんかコンテンポラリーで、今でも充分イケてるで♪


<第一章 装丁・装画>よりp26
<雪岱が描く泉鏡花の世界>
2枚


日本橋

 小村雪岱は、泉鏡花に始まり、久保田万太郎、水上龍太郎、谷崎潤一郎、里見頓、長谷川伸、邦枝寛二らの本を、木版画による表紙画、見返し絵で数多く装丁している。
 中でも質量共に最も充実しているのが、泉鏡花の本である。雪岱は10歳頃から鏡花の小説を愛読し、21歳のときに縁あって知己を得る。二人の深い関係を示すのは、「雪岱」という号を鏡花から贈られたことでもわかる。

 大正3(1914)年に、鏡花の「日本橋」(千章堂)を初めて装丁して以来、雪岱が春陽堂から刊行した鏡花本のほとんどの装丁を行った。雪岱は鏡花本の装丁について「中々に注文の難しい方で、大体濃い色はお嫌いで、茶とか鼠の色は仕えませんでした」と振り返るが、鏡花の浪漫的な文学世界に雪岱の情緒豊かな装丁・装画はぴったりと寄り添い、えもいわれぬ美しい世界を生み出している。

<「日本橋」>p28
39

 泉鏡花は、この単行本を書き下ろしながら、装丁を小村雪岱に託した。しかし脱稿まで「日本橋」という題は決まらず、題名が決まってから、「日本橋」の文字を橋に見立てた背表紙に置き、表紙の表と裏に川岸の町並みをあしらった絵に描きなおした雪岱初の装丁作品である。

<第二章 挿絵>よりp46
<白黒の線描に息づく江戸情緒>
 雪岱は、大正11(1922)年から新聞や文芸雑誌の連載小説の挿絵を手がけている。里見頓が、『時事新報』に「多情佛心」を連載する際に、鏡花を通じて知己を得た雪岱を推したことがきっかけとなった。その後、雪岱は数多くの新聞挿絵を描くが、挿絵画家としての人気を不動のものとしたのは、なんといっても邦枝寛二の「おせん」、「お傳地獄」であった。

白黒

 雪岱は、気に入った挿絵を一枚絵の紙本墨絵に描きなおしたが、それらが木版画に起こされたり、挿絵を元に、新たな版画が作られたりしている。現在では、挿絵そのものよりも木版画作品のほうがよく知られている。

<小村雪岱の版画と装丁>よりp66
 ずいぶん前のことだが、「ザ・ウーマン」(高橋陽一監督)という映画があった。江戸の竹本小伝、俗に「あんばいよしの小伝」と呼ばれた、何百人切りだかの女性をモデルにした林美一原作の映画だったと聞く。濡れ場を延々と執拗に撮るこだわりがなかなかのもので、それだけでも見ものの映画なのだが、移り気な「小伝」を妻とした人気役者坂東三津五郎が、女に気持ちを変えられる悲しみ、男の悲しみがその濡れ場から奇妙に響いた映画でもあった。
(中略)
 映画「ザ・ウーマン」に雪岱の匂いを嗅いだのは、原作からでも、監督からでもなさそうだ。おそらくその脚本からだろう。映画の脚本家が『小伝抄』で直木賞をとり、雪岱についても書いている星川清司で、たしか単行本の表紙に雪岱が使われた記憶がある。そのあたりからの匂いだったようだ。小村雪岱は、突然、どこにでもあらわれる。

 小村雪岱の版画の版元となったのは「高見澤木版店」である。もともとは江戸錦絵の復刻木版の仕事を主としていた版元だったが、昭和10年前後から創作版画も含める木版画ブームに呼応して、現代浮世絵を作ろうとした版元の一つだった。すでにコンテンポラリーのまなざしを持った伝統木版の仕事は、その先駆けとして大正時代に渡辺版画店が「新版画」として提示した。
 そして、昭和のこのあたりに、もう一つの動きがある。安井曽太郎作品を木版とした求龍堂、土屋光逸やノエル・ヌエットの土井版画店、やがて竹久夢二や富本憲吉を出すことになる加藤潤二などが活躍し始めるのだ。とりわけ「高見澤木版店」は、版画家ではない岸田劉生のリプロダクションを版行し、藤田嗣治などの洋画家の原画も木版化した。雪岱の版画も、その路線の上にある。



【版画芸術 #146】
版画

雑誌、阿部出版、2009年刊

<商品説明>より
[特集]小村雪岱 KOMURA Settai
たおやかな女性美と江戸情緒
[注目の作家] 中山正/松本旻/オノデラユキ
[版画を見る] 山本容子/山中現
[版画を買う] 2009年冬 版画実勢価格
[版画を作る] 版画技法講座 木版リトグラフ<最終回>
[版画を知る] メディアとしての近代版画史

<大使寸評>
装丁、挿絵に表した小村雪岱の江戸情緒、モダンな感覚が…ええでぇ♪


Amazon版画芸術 #146



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